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この掲示板でも過去ログのNo.22以来たびたびご紹介していますが、今年もNPO法人
バレエノアによる表現力養成のためのサマーワークショップが開かれ、8/1にみかぼ
みらい館ギャラリーでエキシビションが行われました。
おさらいしておきますと、バレエノアはもともと瀬山紀子先生が主宰する高崎沼田
バレエスタヂオを母体とする公演のブランド名で、2004年からはNPO法人の名称にも
なっています。瀬山先生は舞台における表現力の育成に特に心を砕いていらして、
2002年以来、毎夏「表現のための講座」とか「Fopika」の名称で、並みのバレエ教
室には考えもつかないような内容のワークショップを開催してきました。詳しくは
ここの過去ログやバレエノアのサイトを見るとかしてください。確かmixiにもコミュ
ニティがあったかと思います。
紀子先生のお嬢さんでいらっしゃる亜津咲さんはヴッパータール舞踊団のメンバー、
そのパートナーが同舞踊団出身の Fabien Prioville と言うわけで、この二人は何
度もワークショップの講師として来ていますが、2006年の軽井沢ワークショップに
おける「地獄のクリエイションクラス」あたりから Fabien による作品上演に向け
た構想が芽生え、2007年のワークショップでは同じくクリエイションクラスで創作
に取り組み、同年のエキシビションで作品断片を発表。以後これが「紙ひこうき」
として結実し、2008年4月のさいたま初演、8月の世田谷公演、それらの評判を聞き
つけたピナ・バウシュに招かれて11月のドイツ公演、2009年6月高崎公演、7月再度
のドイツ公演へと至る一連の輝かしい成果を挙げたわけです。
「紙ひこうき」はコンテンポラリーダンスに分類されるピナ・バウシュ式のタンツ
テアター作品でしたが、バレエノアワークショップの成果はコンテに限った話では
ないんですね。むしろ、バレエばかりやっていたのでは決して身に付かない演劇的
説得力が備わることにより、クラシカルダンスがより魅力的になる。これがミソと
言うべきです。実際、高崎・沼田バレエスタヂオの発表会や公演を見に行くと、そ
うした効果がはっきりと実感できると思います。個人的には、舞台人を目指すバレ
エの生徒にはこのワークショップを必修にしたいくらいです。Fopikaの最初のころ
は積極的に宣伝して参加者を募っていたようですが、近年はそうしたスタイルはとっ
ていません。けれど、決して内部生だけを対象にした催しではないようなので、心
ある人は問い合わせてみてはどうでしょう。
で、今年は小渕博美さんのアシストを得た北澤輝樹さんによる「造形」、大窪晶さ
んによる「コミュニケーション」、瀬山亜津咲さんによる比較的小さい人たち向け
の「JAZZ DANCE」と、もっと大きい人たち向けの「コンテンポラリーダンス」の各
クラスが開かれました。「造形」は建物を題材に形に表すと言った美術的な作業に
加え、エキシビションでは動物や無生物を衣裳と動作と言葉で表現する身体パフォー
マンスが披露されました。「コミュニケーション」は文学作品の一節を用いた朗読
表現、他者に対するツッコミと反応、与えられた言葉によるインスピレーションを
身体表現にする訓練などが行われていて、「造形」と合わせて演劇性の向上にスト
レートにつながるトレーニングだったように思います。用務員は「造形」の発表を
見ながら、数年前の「琴美~、足もんで~」を思い出していたことです。
また、今年は成人クラスの生徒さんが3人も参加なさっていらっしゃいました。貪欲
な向上心と好奇心は素晴らしいことですし、得てして年長者の方が衒いがない分表
現も説得力も大きいものですが、それがエキシビションにもしっかりと現れていま
した。また、ここ出身でいま新潟の Noism 1 で踊ってらっしゃる真下恵さんも参加
していらして、他の参加者に大いに刺激を与えていたようです。

写真は左上から1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15。←をクリックすると拡大表
示されます。1,2,4 が造形、3,5,6,7,8,9,10,11 がコミュニケーション、12 が JAZZ
DANCE、14,15 がコンテンポラリーダンスです。13 の先生方は左から瀬山亜津咲、大
窪晶、北澤輝樹、瀬山紀子の各氏。7 はパフォーマンス中のガヤですが、こうした何
気ないシーンも実に生き生きとしています。
そうそう、3月にリサーチワークが発表された Fabien の次作はもちろん進行中で今
回も来日していましたが、ワークショップとは切り離して別途合宿のうえ作品づくり
をするそうです。公開時期とか、もろもろのことはさいたま芸劇に聞く方がいいかも。
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